家を買うことは、人生の中でもっとも大きな買い物といってよいでしょう。
いろいろ悩んで一大決心をするわけですが、間取りや立地などのほかに、住宅ローンの悩みも深いですよね。
一括で家を購入できる人はそれほど多くないでしょうから、当然のようにローンを組むわけですが、一体自分が20年後、30年後にどうなっているか予想できる人はあまりいません。
住宅ローンの返済期間については、最長で35年、完済時の年齢を75~80歳とする金融機関が多いですが、先のことはあまりにも遠い未来なので、なかなか実感がわかない人がほとんどでしょう。
ローンを組むときには、今の自分の状況しか頭になくて、「今払えるからこの先も払えるだろう」と考えがちですが、長い人生の間には、失業したり、病気になったりと、
予想もつかない事態に陥る
という可能性もあります。
ここでは、住宅ローンの返済で困らないように、あらかじめ知っておきたいポイントなどについてお話ししてきます。
住宅ローンの延滞が続いたらどうなるのか?
まずは、住宅ローンの延滞が続くとどうなるかを段階的に見ていきましょう。
ローンの支払いは、毎月返済日が決まっていますが、その日までに入金されなければ、銀行などから電話や書面で支払いを求められます(「督促:とくそく」といいいます)。
電話や書面で支払いを催促されてもそのままにしていると、「内容証明郵便」での督促がなされます。一般的には
3ヶ月以上滞納すると内容証明郵便
が届くことが多いです。
それでも支払いに応じないと、今度は
ローンの残高を一括で請求
されます。目安としては、延滞が6ヶ月続いたら一括で請求されると覚えておくとよいでしょう。
「えっ?」と驚かれた人も多いかもしれませんね。
毎月のローンの金額が支払えずに延滞しているのに、多額の残金を一括で請求されても、支払いは到底無理な話です。
ですから、金融機関は、今度は個人ではなく、住宅ローンの保証会社に対して支払いを肩代わりしてくれるように請求するのです。
ここまできてしまうと、その後の交渉相手は保証会社となり、保証会社と今後どうしていくか決めることになります。ローンを組んだ本人に支払う意志があるときには、保証会社もなんとか話し合いに応じてくれる余地は残されています。しかし実際には、銀行などが保証会社に肩代わりを頼んだ時点で、
任意売却か競売にかけられてしまう
ことが多いのが現状です。
苦労して手に入れた家がなくなるのは大変辛いですよね。
6ヶ月以上ローンを滞納することがないように、肝に銘じておきましょう。
返済できなかったら、自分はどんな対応をすればよいのか?
何かしらの事情でローンの返済が苦しくなったとき、なんとしてでも返済を続けようとして、あらたに別の高利の借金をしてしまう人がいますが、これは絶対避けるべきです。
ローンの返済に困ったときには、
なるべく早く銀行などに相談
して、具体的にどうしていったらよいか話し合ってください。実際に融資してくれた銀行などの窓口に直接行って、事情を説明しましょう。
各地の銀行協会には、「銀行とりひき相談所」というものがあって、ここでも相談することはできますが、自分がお金を借りた銀行などに直接話を持ちかけた方がベスト。銀行側も、抵当権を実行して競売にかけたりするよりは、融資を受けた本人と相談して、返済可能な方法を探っていった方が良いと考えるはずです。
ちょっと恥ずかしい思いもあるかもしれませんが、自分の
今の状況を正直に話してみる
ことです。
融資の限度額まで借りないこと
住宅ローンが払えなくなる原因として多いのは、そもそも元々の返済計画に無理があるケースです。
素敵な家に住みたい気持ちは分かりますし、あれこれ物件を見ているうちに欲が出てしまうこともあるでしょうが、夢ばかり追わずに、そこは現実をしっかり見つめることが大事です。
融資の限度額いっぱいまで借りてしまわずに、普段と同じような暮らしを続けながら、
無理なくローンを返せるように
資金計画を立てるべき。
「家を買ったから節約しよう」と考えるのではなくて、「節約してお金を貯めてから家を買おう」と考えるのがベストです。
なにがなんでも今すぐに家を買おうとするのではなくて、頭金を貯める努力をする方が先決でしょう。
借金をしてまで頭金を作ってはいけない
家を購入するときの頭金は、今まで貯めた貯金を充てるのが一般的ですが、貯金の全額を使わないようしましょう。
生活していく上で、急にお金が必要になることはよくあります。
車を購入したり、子供の教育資金、病気や怪我に対する備えや冠婚葬祭など、家を購入する以外にもさまざまなお金が必要ですね。
さらに、家を購入するときには、家具などもそろえるでしょうし、将来的なリフォームのためにお金が必要になることも考慮しましょう。
ですから、預貯金はある程度残しておかなければなりません。貯金の全額を頭金にあてるのは非常に危険です。
決定的にまずいのは、借金をしてまで頭金を作ろうとすることです。
消費者金融や銀行からお金を借りてまで頭金を作ろうとする時点で、将来的にローンが払えなくてマイホームを手放す結果になるのが目に見えています。
あくまでも、普通に生活していて余力がある場合に、不動産の購入を考えるべきです。
ボーナスでの返済額を大きくしない
ローンの返済において、ボーナス併用払いをして月々の返済額をおさえる人は多いでしょうが、ボーナスでの返済額は最大でも融資金額の半分までにするべきです。
あまりにも
ボーナスに頼り過ぎるのは危険
です。
会社の業績悪化や倒産により、ボーナスがなくなってしまうこともあり得ます。
それでなくとも、一般的なサラリーマン家庭にとって、ボーナスは大きな味方。月々の給料で買えない商品を買ったり、貯蓄にまわしたり、何かあったときに頼りになるのがボーナスです。
このように、家計に安心感を与えてくれるボーナスの多くを住宅ローンの返済に充ててしまうと、経済的に圧迫されます。
ボーナス払いの金額はなるべく少なくし、貯金をして
その分繰り上げ返済をしていく
方が、無理のない返済計画であるといえます。
夫婦合算の収入を基準にしてはいけない
住宅ローンを組むときには、同居者全員の収入を合わせると、1人で組むときよりも多く融資してもらえます。
夫婦が共働きの場合、現時点での2人分の収入を合算してローンを組んでいる人もたくさんいますが、いつまでも
今の状態が保てる保証はない
のです。もしどちらかが収入源を失うような事態に陥ったら、途端に住宅ローンの返済は厳しくなってしまいます。
とくに女性は、妊娠・出産・育児などのために退職するケースは多いですし、自分は働き続けようと思っていても、周囲の状況がそれを許してくれないこともあるかも知れません。
男性も同様に、
人生何が起こるか分かりません
が、夫婦の合算で融資を受ける際には、とくに無理なく返済できるよう計画を立てることが必要でしょう。
ローン返済に困ったら、早めに金融機関に相談すること
不測の事態が起こって、住宅ローンの支払いに困ったら、まずは
融資を受けた金融機関に相談
にいきましょう。
なんとなく言いにくいからと、近所にある消費者金融でお金を借りて住宅ローンの返済をするなど、その場しのぎの解決法は絶対にやめましょう。借金が雪だるま式に増えていくだけです。
自分がローンを組んだ銀行などに相談すれば、
一緒に解決策を考えてくれます
ので、無理のない返済方法に変えるなど、すぐにマイホームを手放さなくてもよい結果になることが多いです。
金銭的に行き詰まった状態でも、個人版の「民事再生法」を利用するという方法をとることもできます。
前述したように、滞納が6ヶ月過ぎて残金の一括請求をされても支払えず、交渉相手が銀行から保証会社に移ってしまうと、任意売却か競売にかけられるかという状況になります。
住宅ローンを払えないような事態になったら、早めに融資を受けた銀行などに事情を説明しに行きましょう。
滞納するような事態が起きたときというのは、リストラや病気・疾病などでとても大変なときでしょうが、本人が行けなくても家族が相談に行くなど、大切な我が家を守るために、精一杯の努力をすることは大事ですね。
結局、家を買うときには、
無理な返済計画を立てないこと
が一番です。
なかなか難しいことですが、目先のことだけで考えずに、20年30年先のことを見越して、身の丈に合ったローンを組むことが大切になってくるのです。